UmbreArchitects展 ギャラリートークレポートPart①

去る2019年12月14日にプリズミックギャラリーで開催中の「構の形」UmbreArchitects展に合わせて、建築家の石田敏明さんと藤野高志さんをお招きして、ギャラリートークを行いました。当日は学生から建築家の方、一般の方まで約40〜50人方にお越しいただき、会場も巻き込んだ、楽しくも踏み込んだイベントとなりました。本レポートでは前半のレクチャーと後半の議論を2回に分けてアップいたします。

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トークイベントのテーマは「人と環境をつなぐ建築」。まず前半はテーマに沿って3者がそれぞれの作品をレクチャーしました。

取り上げられた作品は

1:石田敏明さん:浦崎の家〜T2bldg〜O-clinic annex

2:アンブレ・アーキテクツ:「だんだん」保内児童センター・保内保育所

3:藤野高志さん:天神山のアトリエ

 

トップバッターの石田さんは1984年完成の処女作「浦崎の家」から1997年完成の「T2bldg」、2019年完成の最新作「O-clinic annex」まで35年間で建築と環境との関係性をどの様に考えて来られたかをご説明いただきました。「浦崎の家」では「環境を定位する架構」というテーマで、場を規定するグリッドフレームとそこに多様な場を発生させる装置の在り方が解説されました。均質な3.8mグリッドに周囲の環境と呼応するように場の特性を発生させる装置を挿入することで、環境と呼応した場を位置づけることが試みられています。続く「T2bldg」は「生活の記憶としての環境連続体としての建築」がテーマ。商業地域の都市環境においては、高さの変化によって劇的に周辺環境が変化することにダイレクトに反応した建築の在り方が提示されました。「浦崎の家」の均質なグリッドフレームによるある意味では規定された場の作り方からより柔軟に周辺環境に反射的に反応して形づくられる場の在り方が展開されています。そして最新作の「O-clinic annex」では、2006年に完成した石田さん設計の「O-clinic」横に増築された小さな建築が紹介されました。テーマは「不連続統一体としての建築」。キュービックなヴォリュームの「O-clinic」に対して「O-clinic annex」はクロソイド曲線に近い形態をした建築。全く違う建築が不連続な統一体として作る町並みや風景についての試みが提示されました。

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2番手の私達アンブレ・アーキテクツは愛媛県八幡浜市の「だんだん」保内児童センター・保内保育所についてお話をさせていただきました。リアス式海岸の宇和海に面した日本有数の蜜柑の産地である八幡浜で、建築がいかに人と環境を結びつけるかをコンペの経緯から説明しました。「子どもたちの主体的な活動を見守ることができる子育て施設」という私達が設定した子育て施設のコンセプトを、「襞のある平面形式」と蜜柑の段々山の地形と、八幡浜の木造建築遺産である日土小学校の建築言語であるハイサイドライトを組み合わせた「段々型の断面形式」によって形づくった骨格が今回の展覧会のテーマである「構の形」であることを提示しました。

 

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最後の藤野さんはご自身の生物建築舎の拠点である「天神山のアトリエ」についてご説明いただきました。太陽の動き、空気の動き、雨、植物、更には湿度や匂いなど、人を取り巻く生き生きとした環境と人の生をいかに等価に扱うか。それが藤野さんの建築のテーマであるという。「天神山のアトリエ」では、空に開いた(ほぼ前面がガラスのトップライト)4枚の壁があるだけ。床は外部の土が入り込み、様々な草木が匂いの分布でプランニングされる。気象の変化に耳を澄ませ、明日のために深呼吸するように開口部の開閉率の調整を行う。室内の樹木が育ったことで夏の暑さはかなり低減され、まさに自然環境とともに成長し呼吸する器官の様な建築。厳しく、儚く、美しい地球環境と人と建築が一体となった環境について、詩的にそして文学的に語っていただきました。

 

3人のレクチャーを受けて、3者それぞれの環境の捉え方の違いと共通点が見えてきましいた。藤野さんは非常に身近な自然環境をテーマとし、石田さんはもう少し引いた町並みや周辺環境を、アンブレはもっと広域な地形や地域の歴史を環境として捉えていることがわかり、まるでgoogle-earthで拡大縮小をしているような感じでとても興味深いレクチャーとなりました。このあと、3者の共通点を見出した石田さんの発言から議論の口火が切られます。そして最終的には会場も巻き込んだ議論が多方向に展開していくことになりますが、その様子は、後日パート2で報告させていただきます。