Terrace & Hut

敷地は多摩川が形成した立川崖線に位置し、南側に府中競馬場の豊かな緑が広がる住宅地にある。施主が生まれ育ったこの土地で、結婚後は別々に暮らしていた姉妹世帯と母が集まり、3世代10人が共に暮らす住宅を計画することになった。まず、環境に呼応するように土地の高低差に沿って段々状のRC地盤をつくり、地盤上部に食べる、くつろぐの共有スペースと日中の多くの時間を過ごす母のスペースを配置し、地盤下部に姉妹世帯のプライベートスペースを計画した。構造計画は、地下をRC造、地上を木造とし、共にラーメン構造とした。異種構造の柱を同一寸法で接合し、柱間の開口を連続させ、垂直方向の連続性と水平方向の開放性をつくり出している。空調計画は、ACとガス床暖房を採用しているが、循環換気ダクトで最上階と地下をつなぐことで、夏場は地下の冷えた空気を上げ、冬場は最上部の暖気を下げることで、年間を通じて建物全体が快適な温熱環境となるように空気の流れをつくっている。環境の特徴と呼応した様々な居場所を用意することで、世帯の枠を越え、多人数で暮らしながら個々が快適に過ごせる空間ができたのではないかと思う。

 

断面図

図面 v2016

 

 

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1階エントランス。2世帯別々に設けられた玄関は、内部ではつながっています。右側は地下に降りる階段とロフトスペース。

 

 

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ロフトスペースはガラスブロックで仕切られています。ガラスブロックは遮音性が高く、透明から半透明、ほとんど姿が見えないタイプまで透過性を選ぶことができる素材です。今回は両世帯の子どもたちが使うスペースなので、半透明を選択。

 

 

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地下寝室から子供部屋を通して駐車場を見る。地下でありながら、上部のハイサイドライトによって、明るく、換気も可能。壁は珪藻土漆喰を使用して調湿効果を高めています。そのため、実際、地下でありながら、ほとんど湿気はないそうです。

 

 

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家族の共有ダイニング。府中の緑を最大限取り込むように、上部は欄間ガラスとしています。これは、270角の木造柱を使用した木造ラーメン構造によって可能になってます。10人の暮らしをおおらかに囲う構造形式です。

 

 

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ダイニングから北側を見る。河岸段丘に沿ってレベルが段々状に変化するのがわかります。天井は木毛セメント板。

 

 

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正面に見えるダクトは、地下と上部2階スペースの空気を循環するためのダクト。地中の地下と2階では温度差が大きいため、空気を循環することで、効率よく空調環境を整えることができます。床はイタリア産のセラミックタイル。温水床暖房が施設されているので、夏は冷たく、冬は温かい床です。

 

 

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2階への吹抜け部分。2階は桐材を壁・天井に使用した、温かみのある空間。

 

 

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2階への鉄骨階段。溶融亜鉛メッキ仕上げ。段板はナラ材です。

 

 

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2階の屋上部分は緑化されています。自動潅水システムを設置。ヒメイワダレソウを植えて、下階の母の部屋の温熱性能を高めています。2階のワークスペースからは緑を見ながら勉強や読書をすることができます。

 

 

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2階南側の特等席にある浴室。ゆったりとした広さで、府中競馬場の緑を見ながら1日の疲れを癒やしてくれます。床は冷たくないサーモタイル。浴室壁はFRP、脱衣室壁は調湿効果のある珪藻土漆喰です。脱衣室には窓際にベンチも設けてあります。

建築概要

所在地東京都府中市

用途住宅

構造/規模RC造+木造/地下1階地上2階

敷地面積127.90㎡

建築面積57.63㎡

延床面積173.86㎡

竣工年月2015.10

構造設計frameworks 神野昌也

施行東山工務店

写真川辺明伸

掲載住宅建築2016年12月号 日経アーキテクチュア2016年5月25日号 住人十色(毎日放送) 突撃!隣のすごい家(BSテレ東)