上池袋の住宅

敷地は東京都豊島区の木造密集地域に位置し、災害の拡大を防止するため、東京都に指定された特定整備道路に面している。先々代から住み継いできた敷地は、特定整備道路の拡張工事の始点に位置し、敷地面積の半分が削られることとなった。(112.47㎡→57.37㎡)

俯瞰図

この都市計画によって半減された変形敷地に、母+息子夫婦+子供一人+猫4匹のための住まいを計画することになった。敷地が面する特定整備道路においては、防災上、延焼遮断帯を形成することを目的として、道路に面する建築物は耐火建築物とし、高さを7m以上にすることが条例で求められる。一般的にこのような幹線道路においては、耐火建築物の高層建築が壁面状に連なり、圧迫感のある都市景観を形づくり、道路を挟んだそれぞれの街区同士の関係性は断絶してしまう。

防火遮断帯

本計画では、上記条例の除外規定(7m未満の部分の面積が建築面積の1/2以下かつ100㎡以下のであれば当該部分は適用外となる)を有効に活用し、風や視線の抜けを確保し、スケールを調整して、変化のある町並みとすることを目指した。

まちなみ

 

都市の変形敷地で母、息子夫婦、子供、猫が共同生活をするにあたり、住居面積に因われない良好な暮らしの関係性づくりを行っている。80代の母は外に出やすく、近隣の友人と気軽に会えるように光庭を住宅地側につくり、玄関のアプローチと繋げた。東側に伸びる三角形の光庭は建物が建て込む中で住環境を整え、北側住宅地の隣地境界がつくる空地と繋がって風道をつくり、光庭に面したL型プランは3世代家族に程よい距離間と互いの見守りを可能にしている。子世帯は4匹の猫が家族同様に暮らせるように多頭飼いに必要なテリトリーを守る動線や人と距離感を測れる多様な居場所をつくっている。猫の床である24mmの針葉樹合板が人にとっての3層の床の間に入り込むことで、多層な床が空間の奥行きをつくりだし、人と猫の環世界が有機的に交わる住宅となった。

プラン

猫プラン

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RCのベンチが設けられたアプローチ空間。雨の日にも濡れずに出入りすることができます。

 

 

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1階玄関。コンクリートの螺旋階段が特徴的。家具や扉はラーチ合板。隣地側に設けた光庭からの採光で明るい玄関です。

 

 

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玄関奥からアプローチ空間を見る。

 

 

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1階母の部屋から階段スペースを見る。光庭に面した母の部屋はキッチン、トイレ、洗面器などが設けられています。道路側まで視線が抜けて拡がりを感じることができます。

 

 

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2階子供の部屋。子どもの部屋は一部が吹き抜けになっていて、天井高さに変化のある空間です。採光や通風にも効果的です。

 

 

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コンクリートの螺旋階段室。手摺に設けられた棚は猫の居場所。

 

 

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2階リビングには3階へ上がるためのコンクリートの片持ち階段があります。猫たちのお気に入りの場所になっているようです。

 

 

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2階リビングから子供の部屋方向を見る。2階も光庭方向に開口を取ることで、1日中明るい空間です。3階への吹き抜けもあり、様々な方向へ視線が抜け、立体的な拡がりを実現しています。

 

 

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キッチンからリビング方向を見る。

 

 

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3階ブリッジ。正面には屋上テラスがあります。屋上テラスは子供の部屋の吹抜け部分のヴォリュームに囲まれているため、安心感があります。手摺に設けられた棚、収納から飛び出した棚は猫のためのもの。

 

 

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夫婦の部屋からブリッジ方向を見る。収納家具を天井までとしないことで、天井がつながり、拡がりを確保できます。

 

 

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2階リビング。立体的な構成と開口部のとり方によって都市の小さい変形敷地において、拡がりのある明るい住まいを実現しています。人の居場所と猫の居場所を等価に計画した都市型住宅です。

 

 

建築概要

所在地東京都豊島区

用途住宅

構造/規模RC/3階

敷地面積57.37㎡

建築面積34.86㎡

延床面積75.63㎡

竣工年月2019.08

構造設計多田修二構造設計事務所

施行幹建設

写真山岸剛