「親族4世帯+家族の仕事場」のための多世帯住宅である。敷地は南・西側は道路に面し、東側には石神井川沿いの桜並木が続いており、周辺には4~5階建ての会社や集合住宅、3階建ての個人住宅が混在している。別々に暮らしていた4世帯が新たに一つの家で住むために、各世帯のプライバシーを確保しながらお互いの気配や生活感を感じられる家を目指した。4階建ての圧迫感をなくすため、各階を平屋と見立て「重ねられた平屋」とし、平屋をずらすことでテラスや軒、駐車場のスペースを生みだし、形に運動を与えている。階の構成は、1階にパブリック性の高い仕事場、2階に夜間の活動が多い若い世帯の住居、3階に家族の核となる親世帯住居、4階を叔父の住居とし、ホームエレベーターの設置によって、年代の高い世帯が上層階にくることを可能にした。通常の多世帯住宅との違いは、内部に階段がなく、来客も家族も使える外部導線の廊下や階段が各階のテラスとつながっていることである。内部はプライベート性が高いが、外部空間は家族や来客が交流する場になっている。地上に大きな庭が取れなかったが、3階の両親のテラスはいつでも家族や友人が集まることができる大きな家族の庭となっている。
建築概要
所在地:東京都板橋区
用途:住宅
構造/規模:鉄骨造/地上4階
敷地面積:186.46㎡
建築面積:130.07㎡
延床面積:402.34㎡
竣工年月:2007.03
構造設計:テクトニックコンサルタンツ
施行:辰
写真:上田宏
掲載:新しい住まいの設計2009年1月号 MY HOME100選VOL.8