角の塔

板橋区にある木造3階建ての店舗併用住宅である。敷地は活気ある商店が並ぶ旧中山道と直行する王子新道沿いにあり、通りには昔ながらの住居付き店舗(飲食店や美容室、漬物屋)が残りながら多くは専用住宅に建ち変わっている。施主は50代のご夫婦で、慣れ親しんだ地元のこの場所で定年後に飲食店を開く計画をされている。店舗上部の住居部分はお子さんと放し飼いのオカメインコが同居する。

構造は各フロアの平面と空間を最大限有効に利用できるように内部に耐力壁を出さずに外部周りに筋交を利用した耐力壁を設け、一部開口に掛かる筋交は現しにし、燃え代設計により柱梁を現しにしている。内部には1階から塔屋まで2本の現しの柱が出てくるが、各フロアの空間とバランスをとるように150角→125角→105角と柱寸法を上階になるにつれ細くしている。

住居部分は2階南東角の隅切りを反転するように3階南西角を隅切りしたことで2階から3階の内部導線に直角の入隅がなくなり、なめらかに上階に上がっていく感覚が得られる。2階と3階をつなぐ吹き抜け空間は放し飼いのオカメインコにとっては縦に移動できる空間でフラットな天井のマンションから引っ越した後はリラックスして過ごしているとのことである。

二股道路の分岐点という立地を生かした外観とするため、店舗の目印である庇を隅切り部に回し、角に向かって段々と高さを出している。隅切り部に植栽が置けるくらいの小さなテラスを設けたことで暮らしの一部が外観のアクセントとなり、住居と店舗が混在する地域で親しみやすさと存在感の両方を兼ねた構えとなった。

 

20210415_78A0360南側外観。1階店舗と2階、3階住居のデザインを統一して全体で店舗としての存在感を表している。

 

20210415_78A0387-Edit2階住居のLDK。ごろっと寝転んだり、ちゃぶ台を使用して床に座るため、リビングをキッチンから1段上げて小上がりのようなスペースとしている。

 

20210415_78A0422-Edit吹抜けのある2階リビングから北側方向を見返す。燃え代設計により柱梁を現しとし、天井の強化石膏ボードは素地の仕上げ、床と家具はラーチ合板に自然オイル塗装を行っている。

 

20210415_78A0852-Edit2階から3階の階段方向とキッチンを見る。3階の踊り場は南西角の植栽テラスに面し、ワークスペースとなっている。

 

20210415_78A0499-Edit3階踊り場から2階リビングと階段、3階主寝室を見る。2階リビングの上部が主寝室レベルより1m高い子供室。放し飼いのインコは2階と3階を自由に飛んでいる。

 

20210415_78A0632-Edit3階の主寝室から1m上がった高さにある子供室を見る。

 

20210415_78A07081階の店舗内部。150角の柱が空間づくりのきっかけとなる。

 

20210415_78A1165-Edit外部夕景。2方向に回る庇と隅きり部分に向かって段々と上がっていく外観が店舗としての構えとなっている。

建築概要

所在地東京都板橋区

用途店舗兼用住宅

構造/規模木造3階

敷地面積62.66㎡

建築面積40.87㎡

延床面積103.24㎡

構造設計多田修二構造設計事務所

施行東山工務店

写真鈴木研一