チバウ文化センター


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夏休みを利用して、ニューカレドニアにあるチバウ文化センターに行ってきました。設計はイタリア建築界の巨匠、レンゾ・ピアノ。まだ、私たちが芸術学校の学生だった頃の1998年、衝撃的にデビューしたチバウ。当時、芸術学校の教授だった鈴木了二先生もすぐに見に行かれて、良かったと仰っていました。それ以来、いつかは見に行きたい建築の一つでしたが、ついに、行くことができました。チバウ文化センターは、ニューカレドニアの独立を先導していたジャン・マリー・チバウの業績をたたえ、ニューカレドニアの伝統的文化であるカナック文化を後世に伝えるために建設されました。

当時の大統領だったミッテランは1990年に国際コンペを行いました。約170のエントリーから二日間の初期審査で10組の建築家が選ばれ、デザインコンペに進み、1991年にレンゾ・ピアノが選ばれました。レンゾ・ピアノはパリのポンピドー・センターや日本の関空の設計で有名ですよね。

アクセスは、ヌメアという町のココティエ広場よりバスで30分ほどですが、行きはホテルからタクシーで向かいました。

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エントランスを過ぎると正面に薄っすらと回りの樹木に溶け込んだ、あの有名なチバウのシルエットが見えてきます。この時点でかなりドキドキしてしまいました。

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そして、途中には全体マップがあります。湾に沿って小道を歩いてゆくといよいよエントランスです。

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正面には、フランスで加工された集成材を使用したカーズが見えます。チバウ文化センターは、このカーズが10個とそれらをつなぐ道(動線)で構成されています。

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各カーズをつなぐ動線部分は非常に緩やかな円弧を描いていて、また、地形に沿って段状になっています。天井高さも抑えられていています。実測で2.4mくらいでした。当日は、9月から始まるイベントの準備をしていました。ちなみにこの通路は半外部的な空間で、空気は外気とつながっています。その半外部感と抑えられた天井高さがとても良かったです。

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そして、この通路には写真の様に幾つかの完全な外部空間が挿入されています。ここは雨も落ちてくる場所となっていて、植物などが植えられています。上部にはパンチングされたルーバーが設置され、強い日差しを柔らかく取り込む効果があります。

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そして、カーズの中へ。カーズとはフランス語でCase、英語ではHutで小屋の意味ですが、ここではカナックの茅葺き屋根の小屋を指しています。カーズの中はカナック文化の展示室や図書室、レストランなどの諸機能が配されています。そして、カーズは外部側の垂直方向に円弧を描いた集成材の柱と内部側の垂直の柱+ルーバーサッシのダブルスキンで構成されています。基本的に壁というものはなく、このガラスルーバーのガラスを透明にしたり、半透明にしたり、場合によっては不透明にしたりして、諸機能に対応しています。このルーバーの開閉によって、様々な季節の気候に対して自然換気で快適な環境となるように考えられています。この日も外部から心地よい風がルーバーを通して流れ込んできて、とても快適でした。

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カーズの外部のディテール。外側の円弧の集成材と内側の垂直の集成材が柱脚の金物で一体化されています。また、内側にルーバーサッシが設置されているのもわかります。この部分は不透明パネルのルーバーですね。そして、外側の集成材には、木製ルーバーが取り付いています。簡単に取り外せるディテールになっていました。

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ニューカレドニアにはcook pine(英名)/ナンヨウスギが多く見られます。このナンヨウスギの垂直性や半透明な感じと、カーズの建ち方が見事に調和していますね。また、このパイナップルの様な形状は貿易風やサイクロンの強風を逃がしながら風圧力差や重力差による換気を実現する為のものです。

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敷地内には、カナックの住居小屋も実際に建てられていて、体験することができます。

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手前にカナックの住居小屋、そしてナンヨウスギに溶けこむように建つカーズ。地域の歴史や文化、自然環境と現代的な技術を融合してできたチバウは、本当に素晴らしい建築でした。もう、ほとんど自然と一体化していて、ずっと昔からここにあるような、風景や環境を創りだしていました。


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見学後、ヌメアのココティエ広場にバスで戻って、家族でパニーニ。エスプレッソがメチャウマでした。

 

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チバウも最高だったけど、海も最高でした!